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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第四章 ほんまもんの不良中年や

written by Akio Hosokai

030.jpg The Rainが新宿「キャロルハウス」で久しぶりにライブ活動を再々開したのは、44歳の時だった。馬鹿の一つ覚えのような「熱い入れ込み」もなく、ある意味で淡々とステージを演出することができるようになった。当たり前だな、どう見ても中年なのだから。ところが、またしても変化が起こった。仲本が自ら買収したホテルのオーナーになって、故郷の沖縄に帰ることになった。最大の戦力喪失。一方で、名和が家族を連れて故郷の佐世保から東京に舞い戻ってきた。しょうがねぇなぁ。また、いっしょにやるべ。

 翌年のライブは、メインボーカルを失った分、さすがに寂しいものがあった。お客さんの中に、細貝の会社の同僚で塚田哲男というひげ面の男がいた。「お疲れさまっす!」ライブ終了後の挨拶にきた塚田は、「いっしょにバンドやらないか?」という細貝の誘いに「やりたいっす!」とその場で答えた。会社帰りのカラオケで塚田の唄の巧さを十二分に知っていた細貝は心の中で万歳三唱をしていた。その後、仕事の都合で名和が抜け、The Rainはようやく現在の形に落ち着いた。ボーカルとサイドギターが塚田哲男、ボーカルとリードギターが屋代雅邦、ドラムスが荒木章安、キーボードが和田善郎、ボーカルとベースギターが細貝明夫、の五人である。このメンバーで、現在の54歳になるまで「キャロルハウス」を本拠地として毎年欠かさずライブをやっている。Y2Kで1回だけ休演した年を入れると、連続11年間やり続けていることになる。ちょっと見は我々とほとんど変わらないが実は8歳も年下という、塚田の歌唱力のおかげで、演奏するナンバーはこれまでのどの時代のThe Rainよりもロックっぽい。若い人達が聴いても、それなりにロックだと思ってくれると思う。いや、そうだといいなぁ。この齢になってつくづく思うのは、ロックバンドに年齢は関係ないということだ。そこに「情熱」や「感動」や「衝動」が存在していればそれで良いと思っている。

 細貝の小学校時代からの親友の石坂哲夫が、勤務先の宝石展示会にThe Rainを雇った。多額のギャラを渡しながら「俺も学生の頃バンドをやっていた。だから、いまだにロックを続けているお前らにライブをやってもらった。」と自分のことのように喜んでいた。「ほんまもんの不良中年や!」そろそろ初老の域に突入するのに面映いが、ライブに来てくれた中学校の同期生の一人が同期生のホームページに投稿した文章のタイトルである。俺たち、不良なんやて。うれしいやおまへんか。不良になりたかったんやさかい。しかし、こうして押しも押されもしない不良になってみると、自分を不良だとは思わない。ビートルズの曲が教科書に載るようになって久しいが、もうとっくに、ロックと不良との因果関係は消滅しているんじゃないの。自分達が好きな音楽を、好きなように演奏して、自分達が楽しく、そして聴いてくれる人々が楽しければ、それだけで良いんじゃないの。