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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第四十九章 しばらく心を休めます

written by Akio Hosokai

1123001.jpg「細貝さんと同じ考えです」自筆の三冊を俺に差しだして、ホワイトボードに何やら図を描きながら講義が始まった。いやまさか、講義ではないだろう。ジョンソン&ジョンソン日本支社長を永年務められた有名な新将美社長。彼が次に社長になった外資系企業の社長面接に、俺は来ていた。驚きました。やっぱり、講義でした。一言でいえば、「平等である必要はない。むしろ平等はありえない。しかし、そこに至る過程は、公平でなければならない」と言うのが、新将美社長の講義内容だった。そして俺は、その会社に採用された。

このごろ格差という言葉がよく紙面に出てくる。この格差が拡大しているらしい。

勤め先のビルに就労支援センターがある。若者が暗い顔をして通ってくる。なぜ働きたい若者に仕事がなく、高給取りの年配者が天下りするんだよ。無理やりのアベノミクスで、大企業はベア目白押しだが、中小企業には関係ない話。やるせないな。
努力をしないための格差なら致しかたないと思う。格差のないことを平等と言い換えれば理解できるが、やはり新将美社長が言うように、そこに至るプロセスが問題だと思う。

例えば、教育。調査によると、東大生の親の収入が他の大学と比べて一番高いのだそうだ。金持ちの子が有利な入試システムってことかな。塾通いや家庭教師をつけないと合格できない入試システムだとしたら、おかしくないかい。俺の高校時代の友人が、現役時代1,500万円で不合格、一浪して3,000万円で合格した。有名私立歯科大学への〇〇金の話。有名大学卒業というのは、それだけでりっぱな利権だと思う。一生を左右する利権の取得を、公平でないシステムで運用するのは、やっぱり変でないかい。一例だけど…

公務員は試験だけだそうだが、ふつうの会社には人事考課制度がある。評価者側の課題等もあるが、これって、けっこう良くできているシステムだと、俺は考えている。

誰が見ても公平だと思う評価システムがあって、その結果として不平等や格差が生まれるというのなら理解できる。果敢にも俺は、格差問題をライフワークにしようと考えているのだが、実は格差を問題にするのではなく、そこに至るプロセスの公平性に関する問題に興味があるわけよ。まっ、「暖簾に腕押し」と言うか「砂を噛む」ような感じだろうけど。

ということで、どうもこの歳になると世の中の嫌な部分が目について、困ったもんだぜ。
自分の価値観を曲げられないという、老人特有の精神構造に、この俺も突入したらしい。
バンドとまったく関係のない話は、この章が初めてだが、最初で最後にするつもりです。
だからバンド活動に精をだして、しばらく、のんびりと「心を休めたい」と考えています。