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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第四十六章 ダブル・ドーパミン

written by Akio Hosokai

neurotransmitter_home.gif息つく暇もないような時の流れが一段落した。それ以降、時間はたっぷりあるのに、仕事が捗らない。以前の5倍くらい時間がかかる。そうかぁ、公私ともにあまりに問題が多く、かつ忙しかったので、ここにきてやっと、どこかの神様がご褒美をくれたのだと都合よく考えていたが、どうも違う。何もやらなくても、やたら疲れる。

そんな時に出会った本が、中野信子氏の「脳内麻薬」。なるほど、そういうことだったのか。報酬系神経伝達物質であるドーパミン。人間のやる気、記憶、行動、認識、注意、睡眠、気分、学習等の広範囲に影響する脳内物質。例えばSEXで興奮すると脳内で分泌されて、アソコではなく脳が快楽を感じる。それを期待してまたSEXをする。グフフ…、不倫相手とのSEXなら、分泌量も多くなるはずだな。俺のような猿は、酒や煙草に起因する常習性快楽から逃れられず、依存症になることもある。ただ驚いたことに、良い時だけでなく、悪い時にも分泌されるという。苦しいのに走り続けるランナーズハイとか、東京大学合格を目指して2年も浪人する奴とか。もっと知りたい人は、自分で調べて下さい。

事業計画を企てて、それを実行するのが俺の仕事。しかし、考えがまとまらない。時間がかかりすぎる。忙しさの反動なのか、前のように「やる気」が出てこない。風も波もない海を食料満載のヨットで漂っているような感じ。積極的にならないことに慣れてしまった。何もしないからドーパミンは分泌されず、脳は快楽を得られない。精神が昂揚しないから、エネルギーは出ない。こういう状態が続くと「うつ病」になるらしい。給料もらいながら「うつ病」やってたらマズイでしょ。何とかしなければ…と焦っていた矢先の「脳内麻薬」

解決策は目標を持つことだった。何だ、そんな当たり前のことだったのか。いつもやっていたことじゃん。ある専門家の論文に、目標を設定してそれに向かっていくとドーパミンが分泌されると書かれていた。5倍も時間がかかった事業計画には、会社と自分の目標をしっかり組み入れた。そして今、前の状態に戻りつつある自分を感じられるようになった。

さてバンドだけどね。それ自体、ドーパミンを分泌する要素を含んでいるわけよ。「お歳のわりには、お若いですね」などというのは、ドーパミンが大量に分泌されるので、心も体も活性化しているからだろう。ある専門家は、ドーパミンを分泌する代表選手はセックス・ドラッグ・ロックだと書いている。よし、そういうことならば、この際、徹底的にやってやろうじゃねえか。今さらセックスが目標ってのは無理だな。バンドだ。課題曲を粛々とこなすだけでなく、バンドの目標を意識してドーパミン漬けになってやろうじゃねえか。ロックと目標のダブル・ドーパミン。ロックに「うつ病」なんか似合わないぜ。快楽快楽。ロック野郎はロック野郎らしく生きようぜ。興奮しすぎて、腹上死しない程度にさ…。