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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第三十三章 出会い

written by Akio Hosokai

bind_65.jpg「俺、ANAのパイロット養成、2か月半も試験を受け続けて、結局、耳が悪くて落ちた」「あら私も。JALのスッチー、心臓がちょっとだけ悪くてだめだったの」空つながりだ。その女を意識した瞬間だった。「失敗した失敗した」と、今も空つながりを嘆き続けている女房との出会いだった。あれ以来この落第クルーは、何回も乱気流に巻き込まれ、タッチアンドゴーを繰り返しながら、低空を這いつくばるように飛んできた。キャプテンがだめだと、フライトアテンダントは苦労するらしい。

いや、そうじゃねえ。そういう話じゃねえ。The Rainに関する出会いの話だ。んだば。

まず屋代雅邦。中学2年の同級生。細貝は真面目な屋代を利用していた。彼の教科書には重要な部分に赤線が引いてある。試験前には必ず借りていた。同じ高校に行き、修学旅行も同じグループだった。大学に進むと親父さんが転勤したことで、彼はアパート住まいになった。その部屋は、いつの間にか俺にとって、宿泊可能な無料同伴喫茶になっていた。

次、荒木章安。中学3年の同級生。グループ交際の仲良しメンバー。色気づき始めた少年少女たちの「甘酸っぱい思い出」が彼との出会いの原点。中学時代の甘酸っぱさが苦さに変わる大学時代も、二人はその手の思い出を作り続けていたのだから、しょうがねぇな。
高校は別々だったが、彼と俺はブラバンつながり。彼はフルートで俺はパツラ。だから、彼はドラムスの譜面が読める。すげえだろ。

はい次、和田善郎。大学時代の同級生。何よりもジャズが好きで知り合った二人は、授業そっちのけで東京中のジャズ喫茶に入り浸っていた。まじめで純粋培養のような彼も、徐々に俺と同じベクトルを持つようになり、妙な因果でロックバンドを結成した。余談だが、The Rainの真夏のBEACH LIVEで、彼の姉貴に「こんな世界に和田をひきこんで申し訳ありません」と詫びをいれたが、姉貴は「善郎が選んだことですので問題ありません」と、ピシャリと言った。その姉貴は、荒木章安の嫁さんになった。

そして、塚田哲男。彼は、俺が十数年前に勤めていた外資系企業の同僚。カラオケで洋物がやたらに上手だった。優秀な男だったので「プロダクトマネージャーになれ」と社長に言われ、そのプロマネってこんな仕事だと俺が説明した途端、会社を辞めやがった。この出会いがなければ、The Rainは揚力不足で、回復不能な失速状態に陥っていただろうて。

ページが足りない。この素晴らしい仲間達。このごろ齢のせいか懐古趣味になっているが、過去があって今があるんじゃねぇか。悪いかよ。今のことは、LIVEで見てくれ。