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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第二十五章 のってるか〜い?

written by Akio Hosokai

santana.jpgガラガラガラガラガラガラガラガラ…。急な斜面を大音響で転がり落ちる石油缶より早く三人の馬鹿野郎は懸命にその場から逃げた。「なんで蹴飛ばすんだよ!」「あんなところに石油缶があるなんて見えなかった」「もう少しだったのに…ドジ!」
その別荘に若い女性グループが来ていることは明るいうちに確認済み。暗くなったら偵察に行こう。三人の懲りない志願兵が匍匐前進。そして、このザマだ。

学生時代最後のバンド合宿。寒い季節。長野県安曇野の学者村という別荘地。メンバーの誰かの親父さんの別荘があった。学生時代にThe Rainに関係した、ほぼ全員が参加した。飯田橋のルーテル教会での台風のようなパーティーを最後に、狂乱ライヴは全て終了し、卒業後の就職先も決まっていた。そういうまったりした時期の男だけの合宿。

ラテンロックを練習した。Black Magic WomanだったかO Ye Como Vaだったか。仲本・和田・荒木・細貝の定番構成に、リードギターの屋代、ボーカルとパーカッションの外間、クーサとパーカッションの谷が加わった。今でも覚えている。スネアをパンパンに張ってティンパレスの代わり。細いスティックで叩くと、まるで本物。ギーチャチャというギロもあった。俺達のような学生アマチュアでも、打楽器系が3人もいると、めちゃくちゃだ。いや、めちゃくちゃ、いい。自分達で、自分達の音とリズムに、酔った。聴いている客が一人もいないのに、ノリにノッタ。

そういうノリを感じるには、もう我々は歳をとりすぎたか。妙に分別がついてしまって、無邪気にノレナイ心と体になってしまったか。You Tubeでプロのステージを見ていると、我々より年配のバンドでも例外なくノッテイル。それも、まずバンドの内部から。バンドと客との関係の前に、バンド内部を盛り上げている。あるメンバーのナイスプレイで他のメンバーが盛り上がる。次はお前の出番だぜ!という雰囲気作りとか。バンドは一人ではない。The Rainが指揮者のいないロックバンドである以上、各人が指揮をして各人が指揮を受ける。いい意味での相乗効果が期待できるバンドになりたい。慣れないアドリヴ的な発声やボディアクションを「お~恥ずかしい」と思わないようになれれば、いいな。

2011年11月のライヴで、もう一つ、いつもと違うことをやった。ユニフォームというほどではないが、全員「革ジャン」を着た。暑い会場で、ドラムスの荒木まで革のベストを着た。

「だから何なんだよ!」……いや、なんかバンドとして、目に見えるノリを表現したくてさ。お客さんから見た目もさることながら、まず仲間内から目に見えるノリを演出したくてさ。それで、さて、はたして、俺達じいさんは…。…「お~い!」…「のってるか~い?」…