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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第十五章 夜中の書斎で一人酒を呑む

written by Akio Hosokai

bind_free100.jpgThe Rainには、歌が唄えて、ギターが弾けて、パーカッションができて、MCができて、ポスターが創れて、WEBを自由に操れて、そのうえレコーディングのエンジニアもやってしまう便利な男がいる。

平成20年10月と11月の録音、「だめだ!」その男は呻き続けた。CD製作を目的としたスタジオ録音。小さなスタジオの生音が、録音すると全く違った再生音に変身してしまう。録音機材を変えて臨んだ12月6日のスタジオ録音。ラストチャンス。その男は無言だった。
録音後、全員その話題には敢えて触れず、何事もなかったように、飲み会になだれ込んだ。

何日か後、その男、塚田から連絡があり、問題の録音をダウンロードした。いい音だった。演奏技量も録音状態も、市販のCDと比較したら、そりゃレベルは低いが、The Rain史上最高作品であることは間違いない。録音機材を変えた事もあるが、あの塚田が、1曲づつイコライザー等を駆使して、丁寧にマスタリングをした結果だった。ベースラインの輪郭をはっきりさせ、ボーカルを前面にひっぱり出し、リヴァーブをほんの少し厚めにかけてあった。いずれにしても、あのスタジオ環境では、十分すぎる出来栄えだ。

これで長年の夢が叶う。夜中の書斎で、自分達の演奏するCDを聴きながら、一人で一杯やる。実際にやってみた。酒の肴はお約束の「あん肝」ではなく「柿の種」だったけど。The Rain…。たまらん。いや、たまらん。泣けた…。
で、一人で愉しんでいてもしゃぁないので、何曲かは我々のホームページに上げる予定。LIVEのような臨場感はないけど、それなりに聴けると思う。そうだそうだ、今年のLIVEの様子、画質は良くないけど、盛り上がっている部分のVTRを上げるように努力しよう。

そんなこんなで、12月19日、銀座のアドリアでThe Rainの忘年会をやった。The Rainってバンドは、ほんとに懲りない面々だぜ。来年は、新曲いっぱいのLIVEをやることにした。「お客さんも飽きただろうし…」なんて言っているが、自分達が飽きたってことだ。一昨年のLIVE、新曲が多すぎて消化不良の部分があった。そういう苦い経験があるのに。

しかし、The Rainの本領は、そういう苦い経験はすぐに忘れてしまうところにある。そう言えば、若い時からそうだった。オボエテイルトヤバソウナコトは、片っ端から、みんな忘れるよう努力した。そうでなければ、ロックバンドなんて、やってられねぇ!ついでに、覚えていなければならない事まで忘れてしまって、この齢になって苦労しているけどさ。
還暦まであと1年半、来年のLIVEは、例年通りの12月開催の予定。考えてみれば、人生第1サイクル最後のLIVEだ。爺さんたち頑張るから、皆さん、楽しみに待っとってね!